■2016.9.2

琉球漆器こぼれ話① 金城聡子/浦添市美術館学芸員

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12世紀前後のグスク時代から1609年の島津侵攻までを
古琉球時代といいます。この時代、琉球は地の利を生かして
中国へ貿易船を送り、大量の商品を得て日本・朝鮮そして
アジアの国々で売り捌きました。さらに現地の特産品を
買い込み今度は自国の商品と合わせて中国へ輸出する
中継貿易を展開したのです。こうした物流や文化交流から
琉球の漆器づくりは芽生え育まれたようです。

琉球漆器の事始めはよくわかっていません。
しかし、ヨーロッパへ渡った古琉球時代の漆器がありました。
15世紀前半の朱塗に金箔で花鳥文様を描いた椀です。
ふっくらと柔らかい形に金箔そのものは少し厚みがあり、
樹木や鳥は型にはまらず自由奔放で生き生きとしています。
オーストリアのハプスブルグ家に伝わり、

記録では「東インド地方の赤い土で作られたお椀」とあるそうです。
ウィーン国立民族学博物館が所蔵しています。

沖縄県内にも古琉球時代の1500年に久米島の最高神女
(ノロ)(祭祀を司る女性の組織)に王府が下賜した
丸櫃があります。勾玉などを入れる器です。
王権の象徴、日輪(にちりん)鳳凰(ほうおう)雲(うん)文(もん)が
細密な沈金技法の金線で描かれ、
鳳凰が優雅に舞う姿は圧巻です。
久米島で大切に保管されています。
古琉球時代の琉球漆器は謎めいていますが、
交易国家の自由さとダイナミックな時代の雰囲気を
今日に伝えます。

 

 

 

写真

朱漆鳥獣草花箔絵面盆リス文様の部分16~17世紀(浦添市美術館所蔵)

黒漆花鳥螺鈿器局17~18世紀(浦添市美術館所蔵)

朱漆鳥獣草花箔絵面盆16~17世紀(浦添市美術館所蔵)

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