■2017.1.30
琉球漆器こぼれ話 ⑥金城聡子/浦添市美術館学芸員
しげしげと所蔵品を眺めていると思わぬ発見をすることがあります。
開催中の「きらめきで飾る螺鈿の美展」(2017.1.14~2.19)の
解説のために数点の作品に向き合っていた時の事。切ないかな、
漆の中に永遠に閉じ込められてしまった一羽の鳥を発見しました。
刀掛けの飾り板裏面に描かれた梅枝に舞う三羽のうちの一羽です。
表面には遊山の様子が描かれていて、中央の馬に跨った高士は
花を片手に何やら楽しそうな表情です。
前方には横笛を奏でる人物と聴き入る人々、後方には楽器らしき
ものを肩にかつぎ談笑する二人組が描かれており、これから合奏
でもはじまりそうです。
春のうららかでほのぼのとした場面は見ている私たちをも誘います。
人々の顔や衣服の柄まで針で毛ぼりして丁寧に描き込み、作り手の
人柄や思いが伝わるようです。それなのに、それなのに!裏面の
漆の中に塗り込められた悲劇の小鳥ちゃん(そう呼びたい)は
飴色の漆の下に透かして見るしかなく、見過ごされてしまいます。
翼を大きく広げ、もう二羽に交わろうとしているようでけな気です。
研ぎ出すのを忘れてしまったのでしょうか?
今回は表面の展示ですが、きっと、近々、酉年のうちに
この小鳥ちゃんを皆様へ御覧いただこうと日々、思うのでした。
開催中の螺鈿展は中国の元時代(14世紀)から琉球と交易した
明・清時代、そして同時代の韓国・日本・琉球・アジア諸国の
螺鈿の優品が並んでいます。
描き込まれた文様の世界で遊ぶのも楽しみの一つです。
写真:黒漆花鳥人物螺鈿刀掛(くろうるしかちょうじんぶつらでんかたながけ)
琉球・18世紀~19世紀作 浦添市美術館所蔵