琉球漆器こぼれ話 ⑦金城聡子/浦添市美術館学芸員
茶の湯の御師匠様が「きらめきで飾る螺鈿の美展」を観にきてくださった。
師匠に色々と教わるつもりでご一緒させていただいた。
展覧会は第1室の中国と朝鮮半島の螺鈿から始まるが、
中国元時代(14世紀)の食籠や東山御物として加賀藩前田家に伝わる硯を納めた箱、
李朝時代の唐草文様の螺鈿などなど、琉球がお手本としたような豪奢な作品がならぶ。
「螺鈿と青貝はどう使い分けているの?」とのっけから師匠の一声。
何か意図がありそうな質問である。
「螺鈿は総称ですが青貝は日本語で、琉球漆器の螺鈿の箱には青貝と
書いてあることも多いですよ、実際に史料に青貝と表記されています」と答えた。
師匠によると、茶の湯の世界では明確にランク付けされていて、
青貝は螺鈿の格下なのだという。
どうも、薄貝を用いて虹色に輝く大きめの貝は青貝らしい。
うーん、18~19世紀末頃の貝摺奉行所製の螺鈿漆器もその中に含まれるということかな。
展示室の第2室から第3室は琉球螺鈿の優品がならぶ。
よくぞ、まあ、これだけ集めてみたものだと自負する展示なのである。
資源は乏しくとも、貝だけは豊富に採れた琉球なので、
その贅沢な貝の使いぶりはアッカンである。
また、TPOによって最上級品があることも思い知らされる。
那覇市所蔵の琉球王族家尚家旧蔵の葡萄螺鈿箱がそれだ。
前期に展示した同家由来の青貝微塵塗腰刀拵もそうであった。
厳選された材料で繊細な仕事を施す。大らかな琉球人のイメージとは異なる。
近世後期に登場する「宇根良方」という作者の螺鈿漆器もまた別格である。
唯一登場する作家名で、よほど評判が良かったのか、
薩摩の島津家家老の樺山家の家紋入り道具を誂ている。
「中山宇根良方製之」や「中山宇根」(中山・ちゅうざんは琉球を表す)と銘があり、
今回は現存する3点すべてが勢揃いした。
琉球の螺鈿のランクの話はひとまず置いといて、ご覧いただきたい。
もちろん、日本の螺鈿も桃山時代の輸出漆器まであり、バリエーション豊富である。
展覧会は2月19日(日)まで。
写真:黒漆牡丹唐草螺鈿卓 中山宇根良方製 浦添市美術館所蔵
展覧会図録 九州国立博物館編と浦添市美術館編
九博図録より宇根良方作の3点