東道盆ってどんなもの?/漆のある暮らし

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琉球漆器の「東道盆」とはどんなものでしょう。

形や使われ方、名前にはどんな意味があるのでしょうか。

 

 

遠来の客をもてなす主

「東道盆」と書いて「とぅんだーぼん(ぶん)」と読みます。

東の道の盆と書く不思議な名称にはどんな意味があるのでしょう。

東道盆の呼び名は「春秋左氏伝」(中国の歴史書)の中の、

遠来の客をもてなすことを意味する「東道の主」に由来しています。

「東道」には、主人となって客の世話をする、という意味があります。

これが転じて琉球では大事なお客様をもてなす食事に使われる器を

「東道盆」と呼ぶようになったようです。

琉球王国の近世文書にも「とんだふ」「とんだあ盆」そして

「攢盒(さんごう)」などの名称でも記されており、王府公式の宴席や

士族の祝宴で酒とともに出されています。「攢盒」には、集合の意味が

あり、小皿が多数組み込まれていることからくる、器の機能に由来する

名称といえます。中国では「攢盒」の名称が残っています。

 

中国は長方形の東道盆

15世紀から19世紀にかけて、琉球王国では漆器が多く作られました。

首里城に「貝摺奉行所」という役所がおかれ、専門に作られていました。

琉球王国がひとつの国としてまとまる力になったことに、中国や朝鮮、

日本、東南アジアとの中継貿易があります。貿易の中で、これらの国々と

交流し、各地のいろいろな文化が入ってきました。漆器もその一つで、

中国から制作技術を学び、琉球の貿易品になっていきました。

東道盆は、中国への献上品としても贈られていました。北京・故宮博物院

では螺鈿や堆錦の東道盆を今も見ることができます。琉球では、円形や

八角形、六角形などいろんな形がありますが、中国へ贈られたのは

長方形の豪華な加飾を施した東道盆でした。

 

お客様をおもてなし

東道盆は、小皿それぞれにごちそう(主に酒の肴)を盛って用いて

いました。いわばオードブル皿のようなものです。琉球国内では、

冊封使をもてなす公式の宴、ほか個人宅での祝宴やお客様の接待に

使われていました。

冊封使をもてなす宴の中で、龍潭池での爬龍船競漕見物の桟敷席で

用いられた記録があり、それを見ると屋外などくだけた場での使用も

されていたようです。

石垣島の名家石垣殿内の護符に、「元服之祝」「歳日祝」「昇進之時」

などで使われた記録があります。首里城で三司官を勤めた伊江親方朝睦の

日記には、寺の住職など囲碁の招待客や、送別のため自宅に招いた客へ、

吸い物や酒などとともに東道盆を出してごちそうしている記述があります。

上級士族などの家には、こうした宴会や接客のために東道盆を備え、

祝宴に使用されていたようです。

 

ゆとりに趣?!

東道盆に盛られた料理を見ると、重箱のように隙間なく料理が詰められて

いるのではなく、ゆとりを持って料理が盛られていることがわかります。

昔はどんな料理が盛られていたのか詳細はわかっていませんが、石垣殿内

「護符日記」の行事と東道盆の記述によれば、花いか・小てんぷら・

紅かまぶく・二色花生・松風焼・ひん豆丸・金しし・紅梅玉子など多数の

記録があります。小皿一枚に一品の料理がゆとりを持って盛られている

ところに贅沢さが感じられます。琉球の人々は、器の中にも趣を演出して

いたのかもしれません。

 

いろんな形と素材

東道盆は漆塗りで、全体の形は円形や長方形、正方形、八角形、六角形

などさまざまで、中に小皿が組み込まれた蓋付きの盆です。中の小皿は、

5枚、7枚、9枚など、盆の大きさや形によって数が異なりますが、

中国で吉数とされている奇数が定番です。小皿の素材は、石、陶磁器、

漆器などがあります。

 

漆実験工房「おきなわ漆」より

解説:宮里正子(浦添市美術館館長)

 

最近では、現代のライフスタイルに合わせた東道盆など

トラディショナルなものから斬新なデザインまで

様々な東道盆が生まれてきました。また使われるシーンも

お正月のおせちを入れたり、お菓子を入れたりなど

自由に楽しもうとする動きもあります。

琉球王朝の栄華を想像しながら、現代的に楽しむ東道盆もいいですね。

 

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お正月のおせちを入れて

テーブルコーディネート:大木綾子

 

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お菓子を入れて琉球ティーテーブルスタイル

テーブルコーディネート:大木綾子

 

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トラディショナルスタイルの東道盆料理

東道料理:嘉陽かずみ

沖縄の漆Webマガジン │ おきなわ漆Web

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