■2016.11.24
琉球漆器こぼれ話 ④金城聡子/浦添市美術館学芸員
今年も紅型作家、冝保聡さんの個展開催のご案内が届きました。
今回は琉球の王子紅型衣裳の復元模造に挑み、
濃いピンク色にカラフルな四爪の龍がハガキの一面を飾っていました。
全身鱗で覆われた霊獣の龍が宝珠を挟み、雲をかき分け闊歩します。
漆器と共通の意匠です。紅型も漆器も同じ絵師がデザインした証でしょう。
一頭は大きく口を開け、もう一頭は口を閉じた阿吽(あうん)の構図です。
目を見開き、前に伸びる腕は何かをつかみ取ろうとしているようです。
五爪の龍は中国皇帝を、四爪の龍は琉球国王、三爪の龍はさらに
格下の身分を表すとされますが、
龍の意匠は誰でも使用できるものではなかったでしょう。
琉球と中国との500年に及ぶ交流の歴史で皇帝への貢いだ漆器には
やはり五爪の龍が描かれました。
黒漆塗りに貝を用いた螺鈿技法(らでんぎほう)の漆器です。
代表的な器物は中に銀の皿を敷き詰めた長方形の東道盆(トゥンダーブン)や、
最大で直径85㎝もある丸盆、標準サイズの34㎝の丸盆は一度に
百枚も贈ることがありました。内に金箔を貼った蓋つきの椀もあります。
こうした漆器が中国北京の紫禁城、現在の故宮博物院に現存しています。
また、館蔵品に三爪の龍の優品があります。
蓋上に双龍、蓋側面に鳳凰が優雅に舞った長文箱です。
天空には私たちの知らない世界があることを想像させてくれる楽しい作品です。
写真
黒漆雲龍螺鈿大盆 浦添市美術館所蔵
黒漆雲龍鳳凰螺鈿長文箱 浦添市美術館所蔵